What's 耐震

第13回 防災と耐震

2019年5月21日

いつ起こってもおかしくない大地震に対して、地震国日本では「防災」という意識が年々高まっています。今回はこの「防災」と「耐震」がどのような関係性を持っているのかを解説します。

「防災」という言葉を辞書で引くと、「台風・地震・火事などの災害を防ぐこと」(デジタル大辞泉)とあります。言葉にするとシンプルな表現となってしまいますが、火事と違って、台風や地震などの自然災害は、そのものを防ぐことは難しいです。私たちにとって現実的な意味合いとしては、「防災」とは「その災害が起こったときに被害を最小限度にとどめる」と言った方がしっくりくるかもしれません。

様々な自然災害の中でも今回は、「地震」に対する防災を重点に解説します。地震の規模にもよりますが、まずは建物が揺れることで起こる被害が考えられます。最悪は建物が倒れることですが、それ以外でも室内の家具が倒れたり、窓ガラスが割れたりすることで人体に被害を与えることもあります。

また、道路や鉄道などの交通網がストップしたり、電気やガス・水道などのインフラが止まることで、生活の基盤が大きく損なわれることも考えられます。そうなると、日常生活に支障が生じてしまいます。そのような時に対応するための「防災グッズ」などもあるので、これらは普段から常備しておくと安心ですね。最近では、太陽光発電や蓄電池なども、省エネ対策以外に災害時の対応として注目もされているようです。

 

しかし、「防災」の最大のテーマは「命が助かる」ことだと思います。阪神・淡路大震災のような直下型の大地震では、耐震性の低い家は建物が揺れ始めてから30秒程度で壊れると言われています。その間に建物から逃げることは至難の業です。地震が起きたときに、建物の中に居ることが「安全」なのか「危険」なのかという判断は命にとって大きく左右されまる判断です。特に、自宅に居るときに大地震が起こったらどうすればよいのか。

「自宅から出た方が良い」のか「自宅に居た方が良い」のか。

選択は二つですが、それはとても大きな選択です。

 

10数年ほど前に、私の友人が二世帯住宅で自宅を建てました。上棟式での挨拶が今でも印象に残っています。ご両親や兄弟、奥さまや子どもの前で彼はこう語りました。

「これからいつ大地震が来るか分からないけれど、もし大きな地震が来たらこれから建てるこの家に集まってくれ。この家は絶対壊れない家になるから」

その友人も建築業界の一員だったので、当時から構造計算の大事さを知っていました。だからしっかりと構造計算のされた木造の家を建てたのです。彼自身も家族の安全を守るための家を建てたいという、強い意思を持っていたからこそ出た言葉だったと思います。今回、防災のテーマでコラムを書くにあたって、その時の言葉を思い出しました。

道路や鉄道、あるいはガス・電気・水道などは、国の公共機関や交通機関、電気やガス会社にしかできない防災対策です。

その一方で、個人でもできる防災対策もあります。
個人ができる究極の防災対策は「自分の家を大地震でも壊れない家」にすることでないでしょうか。私の友人のように、家族に対して自信を持って「大地震の時には家に居なさい」と言える家です。家が壊れてしまうと、その前の道路がふさがって交通網に大きな障害が生じることもありますが、全ての家が壊れなければその影響も減ります。壊れた家に残された人を助ける際にも、その倒壊数が少なければ救助も進み一人でも多くの命が助かります。

改めて述べますが、私たちができる大地震における最大の防災活動は「自宅を大地震で壊れない家にする」ということであると思うのです。そのために個人ができることはとても単純ですが「家を建てる、あるいは購入する際に、その耐震性を見極める」ということだと思います。そのために知っておくべきことを解説してきました。それらを参考に家づくりに取り組んで頂けたら幸いです。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)