What's 耐震

第3回 「構造計算」ってなに?(その2)

2018年6月15日

前回は構造計算についての説明でした。
構造計算の重要性についてはご理解いただいたと思います。しかし、日本で最も多い「木造住宅」の多くが、その「構造計算が行われていないこと」という事実をご存じでしょうか。今回は、その理由と解決策について解説したいと思います。

その理由は大きく分けると3つあります。
まず1つ目、最大の理由でもありますが、それは「構造計算が法律で義務化されていない」ということです。日本で建てる住宅の全ては「建築基準法」に基づいて建てられます。これに適していない住宅は「違反建築」です。 そして、特別な地域を除いてほとんどが「建築確認」という書類を確認検査機関に申請し、その住宅が法律に適合しているかをチェックして許可が下りることで建築が可能となります。本来であれば、その過程の中で構造的な安全性もチェックしなければなりません。実際に「鉄骨造」や「RC造」、「木造3階建て」はチェックします。

しかし、2階建て以下の木造住宅において現在の日本の建築基準法ではチェックはいりません。「2階建て以下&500m2以下&高さ13m以下&軒高9m以下の木造建築(=4号建築物)」は、構造についての審査が特例として省略されているのです。これは「4号特例」といって、実は意外と知られていない重要な事実でもあります。その理由は、木造住宅は全国でもあまりに数が多いのでそれを全てチェックするのが大変だということや、一般の大工さんのレベルがそこに至っていなかったということがあるようです。しかし、近年発生した大地震を踏まえて、専門家からもこの「4号特例」は見直したらどうか、との声も増えています。いずれにしても、現在の法律で義務化されていないわけですから、木造住宅で構造計算を行う住宅会社が少ないのは当たり前のことだと思います。

次に2番目の理由としては、「構造計算を行うにあたって必要な業務が増える」ということがあります。自社で計算業務が難しい場合は、専門の「構造設計事務所」などに依頼することになり、手間も費用も発生します。キッチンや床材などと違って目に見えにくいものにお金をかけるのかというと、経営的にそれを選択しない会社が多いことも理由のひとつになってしまっているようです。

そして3番目の理由は、木造住宅で一般的に使われる部材が、構造計算に適していないということがあります。加工しやすく、温もりがあり調湿作用も高い「木材」そのものは、非常に優れた建築部材です。しかし短所としては、特に「無垢材」はその一つ一つの強度が不明ということがあげられます。例えば「杉」や「ヒノキ」と同じ樹種から作られた同じ寸法の部材であっても、それぞれの強度が全く異なるケースも多々あるのです。計算をするということは、その元になる部材の強度の数値が決まっていることが大前提です。その数値が不明ということは、構造計算をする上で大きなネックになります。

それを解決するには、「構造用集成材」のような一本ごとの部材の強度が表示されている部材を使うことが最も有効です。柱や梁のような基本構造部分には「構造用集成材」、床や耐力壁には「構造用合板」、接合部や柱の足元には「接合金物」などを使っていけば、信頼性の高い構造計算も可能です。

左から「構造用集成材」「構造用合板」「接合金物」

このように木造住宅が「構造計算」されていない理由は、「耐震性の高い住宅を建てる」という目的の前では全く意味のないことです。これからご自分の家を建てようとしている方には、「2階建て以下の多くの木造住宅は構造計算がされていない」という現実を知った上で、あえて構造計算を行って耐震性の高い住宅を建てていただくことを選んでもらいたいと思います。

そのためには、積極的に構造計算を行っている住宅会社に依頼するということが大事です。ホームページなどでその説明がされていると見つけやすいですね。そして、構造用集成材や接合金物を組み合わせた構法を採用している会社なら、なお安心です。プランの打ち合わせの際には、自分たちがイメージする空間の要望も出しながら、それが「計算上大丈夫なのか」についてもしっかりと説明を受けながら進めてください。

「構造計算によって理論的に裏付けされた耐震住宅」

これから本当の意味で耐震住宅を建てる際のキーワードです。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)