What's 耐震

第2回 「構造計算」ってなに?(その1)

2018年5月7日

今回は「構造計算」についてのお話です。

この「構造計算」という言葉は、一般の方にはあまり馴染みのない言葉だと思います。
なんだか難しそうなイメージも身近に感じられない原因かもしれません。

しかし、この「構造計算」は建築業界ではよく使われる言葉でもあり、耐震性の高い住宅を建てる際には、非常に大きな意味を持つ「キーワード」でもあります。
ぜひ、この機会に「構造計算(許容応力度計算)」の本当の意味を覚えていただければと思います。

「構造計算」の意味を大まかに言うと
「地震や台風で建物が壊れないようにするために、建物の構造部分に生じる力や変形を数値で計算し、その構造に使用された材料が安全であるか? 大きく変形しないか? を確認する作業のこと」です。

ビルやマンションなどの規模の大きな建築物では、「構造計算」は必須のプロセスです。
その際は、間取りやデザインなどの「意匠設計」を担当する設計士と、構造部分を考える「構造設計」を担当する設計士が、お互いに話し合いながら二人三脚で設計を進めていくのが一般的です。
ここで「構造設計」を担当する設計士が行う最も重要な作業が「構造計算」というわけです。

では実際に「構造計算」がどのように行われているのか気になりますよね。
それを工程順に簡潔に解説すると次のようになります。

1. まず、建物の重量を算出します。
建物自体の重さは外壁や屋根・床材などで変わりますので、その仕様の情報を元に算出。さらに「人」や「家具」や「屋根に積もる雪」の重さなど、建築後その建物に搭載される可能性のある重量も算出します。その上で、その重さに建物が耐えるように躯体を計画していきます(鉛直荷重)。
なお、建物が地震によって受ける力はその建物の重さに比例するので、そういう意味でも重量を算出することは非常に重要なことでもあります。

2. 台風時にかかる力(風圧力)や、地震時に建物にかかる力(地震力)を算出します。
そして、それらの力が加えられたときに建物が損傷・倒壊しないよう、必要となる「柱」や「梁」の太さ・配置、「接合部」の仕様の選択、「耐力壁」の配置、「基礎」の形状などを決めながら、その建物の構造躯体を計画していきます。

3. それらは個別・単体に計算するのではなく、地震力や風圧力の力が建物の構造にどのように伝わっていくのか(応力)を解析・検証しながら、建物全体として安全な構造躯体になるように設計していきます。
ちなみに、計算時の地震力は耐震等級によって係数を変えます。耐震等級3であれば通常の「1.5倍」の地震力をかけて、それでも倒壊しないように構造躯体を計画していくということになります。

4. 建物の傾きの度合い(層間変形)や建物のねじれのバランス(偏心率)、各階の固さのバランス(剛性率)などが、合格ラインに達するまで構造計画と計算を続けていきます。特にバランスは非常に重要で、たとえ、ここまでの工程で丈夫な建物になったとしても、最終的にバランスが悪いと倒壊する可能性が高まるのです。

このように、間取りやデザインを担当する意匠設計士と相談をしながら、この過程を踏まえてベストな構造躯体を決定していくというわけです。

みなさんがこれから建てようとする家が、このように確かな数値で裏付けられた「構造計算」をしたうえで建てられるのであれば、正真正銘、安心な「耐震住宅」と言えるでしょう。

しかし、ここで意外と知られていない事実をお教えします。

それは「2階建て以下の木造住宅のほとんどは、この『構造計算』がされていない」という事実です。

なぜ、そんなことになっているのでしょうか。
次回で詳しく説明したいと思います。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)